これに対して、イギリスでは社会科学的手法を用いる社会人類学と生物学の一分野である自然人類学、および考古学、言語学は分離されている。このイギリスの制度は、
欧州統合前後からヨーロッパの人類学の発展に大きな影響を与えており、90年代には社会・文化人類学に関する欧州統一学会として、ヨーロッパ社会人類学会が設立された。
人類学は非常に総合的な学問であるため、その制度上の位置づけは上記のようにたいへん複雑である。自然人類学は一般に生物学に属する動物学の下位分野と分類される一方、文化人類学は社会科学に、言語学と考古学は人文科学に分類される。同時に、近年の欧米では文化人類学と自然人類学を結び付けようという動きも高まっている。すなわち人類の文化的多様性に関心を向ける自然・生物人類学者や、人間の生物学的・進化的側面を考慮する文化人類学者が急速に増えている。このように多様な領域に重複して分類される学問は究めて珍しいといえよう。