日本の遺伝学の歴史は古く、日本の遺伝学の代表的な学会は日本遺伝学会であり、毎年一回秋に年会を開き、2007年で79回目を迎えた。また遺伝学を中心とした研究を推進する機関として、
遺伝学研究所が静岡県
三島市にある。研究所発足当初は地元の住民との軋轢があり職員がトマトをぶつけられる事件もあった。現在は住民との良好な関係を築いており、地元では「遺伝学」といえば「遺伝学研究所」を示すまでにいたる。近年の遺伝学は、DNAの塩基配列のみをあつかう進化理論中心のドライな研究と遺伝子やゲノムの機能を解明するウェットな研究に2分化され解離しつつある。進化理論の代表的な研究者は遺伝学研究所の所長をつとめた
木村資生、その「
中立説」は進化理論に大きな影響を与えた。なお現在この中立説は修正を余儀なくされ、現在は、「ほぼ中立説」と名前を変えている。
またウェットな研究分野としての代表者は、多数いるが、その中心人物としては、
岡崎令治と
小川英行(現岩手看護短大学長)がいる。岡崎令治はDNA複製のラギング鎖合成時にRNAの短いフラグメントの形成が起こることを発見し、
岡崎フラグメントと名づけた。これにより
ノーベル賞を期待されたが、癌で世を去った。妻の
岡崎恒子が研究を続け、ユネスコ女性科学者賞をとりその成果を発展させている。小川英行は日本で初めて遺伝的組換えに必須な遺伝子recAを大腸菌から発見した。その後、真核生物の遺伝的組換えにかかわる
Rad51の機能解明、
Mre11の発見など重要な研究を発表し、遺伝子がどのように子孫に伝わり、どのように父親と母親の遺伝子が混ぜ合わされるのかの遺伝学の重要な問題の解明を行った。
遺伝学的手法は二通りある。突然変異体の表現型に注目して、その原因遺伝子を同定し、機能を明らかにしていく古典的な
正の遺伝学 (forward genetics) 、逆に遺伝子を先に単離し、遺伝子破壊等の手法を用いて機能を調べる
逆遺伝学 (reverse genetics)である。前者をヒトに応用した疾患の解析方法が
連鎖解析や
関連解析である。多くの
メンデル型疾患において連鎖解析によって原因遺伝子が特定され、診断や治療に寄与している。また後者は
PCRや
シーケンサーといった技術の進歩によって近年盛んになってきた手法であり、特定の機能を有するタンパク質を同定し、その表現型から予測される疾患との関連を調べる手法である。